2023年01月18日
フレキシブルファクトリパートナーアライアンス
~5G制御、マルチホップ機能を追加し、様々な用途に対応する最適な無線通信を提供~
製造現場での無線利用に対する期待の高まりを受け、より多くの製品に対してSRF無線プラットフォームの適用を検討していただくため、2022年5月に策定した最新のSRF無線プラットフォーム通信規格の技術仕様Ver.2.0を一般公開しました。技術仕様Ver.2.0では、技術仕様Ver.1.1との後方互換性を保ちながら、新規に5G Control for Frequency Control、5G Control for Multi-radio Integration Control、Multi-hop Controlの機能等を追加しました。技術仕様では、SRF無線プラットフォームのリファレンスアーキテクチャ、機能、機能ブロック間のメッセージ・パラメータ、代表的なシーケンスダイアグラム、データフレームを規定しています。FFPAのウェブサイト (https://www.ffp-a.org/document/jp-index.html) からダウンロードできますので、ご活用ください。
フレキシブルファクトリパートナーアライアンス (FFPA) では、製造現場の様々な用途として混在して利用される多様な無線システムを安定化する協調制御技術であるSRF (Smart Resource Flow) 無線プラットフォームの通信規格の策定を行っています。このたび、製造現場での無線利用に対する期待の高まりを受け、より多くの製品に対してSRF無線プラットフォームの適用を検討していただくため、SRF無線プラットフォーム通信規格の最新の技術仕様Ver.2.0を一般公開しました。
技術仕様Ver.2.0では、SRF無線プラットフォームのリファレンスアーキテクチャ、機能、機能ブロック間のメッセージ・パラメータ、代表的なシーケンスダイアグラム、データフレームを規定しており、技術仕様Ver.1.1との後方互換性を保ち、第5世代移動通信システム(5G)と免許不要周波数帯の無線方式の協調制御を追加し、マルチホップ通信などを可能とするネットワークトポロジーの拡張を行っています。技術仕様Ver.2.0に規定されている機能リスト (無線リソース制御に関連する機能を抜粋) を図1に示します。ここで、5G Control for Frequency Control、5G Control for Multi-radio Integration Control、Multi-hop Controlは、技術仕様Ver.1.1に対して新規に追加した機能です。規定している機能は、基本的な制御である必須機能と、装置やシステムを特徴付けるためにベンダが選択して実装するオプション機能に分類されています。機能ブロック間のメッセージは、アプリケーション・プログラミング・インタフェースの一種であるREST (Representational State Transfer) API により定義されています。また、パラメータはJSON (Java Script Object Notation) フォーマットを使用して定義されています。FFPAのウェブサイト (https://www.ffp-a.org/document/jp-index.html) から技術仕様をダウンロードすることができますので、詳細については、そちらをご参照ください。
図1 技術仕様Ver.2.0に規定されている機能リスト (無線リソース制御に関連する機能を抜粋)
FFPAは、2023年1月25日から27日に東京ビッグサイト (西展示棟1階 西2ホール) で開催されるスマート工場EXPO2023に出展します。展示ブース (小間番号61-80) および新製品・新技術セミナー (1月27日(金) 13:00~13:30) において、FFPAとそのメンバー企業から、最新の技術仕様Ver. 2.0を含むSRF無線プラットフォームの社会展開に関しての最新トピックスを紹介します。また、FFPAでは、FFPAの活動やSRF無線プラットフォームに関心を持っていただいた企業の方々からなるユーザーグループ (2022年12月末時点において52企業・機関) でのコミュニティ活動を行っており、2023年3月上旬に、産業用5G/ローカル5Gをテーマとしたワークショップを開催する予定です。ご関心がある方は、FFPA事務局 (Email:info@ffp-a.org) までご連絡ください。
製造現場における無線通信の課題
工場などの製造現場では、消費者の多様なニーズに応えるための生産ラインの柔軟な変更を可能とする工場内通信のワイヤレス化や、無線センサを活用した産業機械の故障予知など、無線の利活用が期待されています(*1)。一方で、工場内においては様々な無線システムが混在することや産業機械から電波雑音が発生することにより、無線通信が不安定化することが課題となっています(*1)。例えば、無線LAN等が使う免許不要帯においては、既に製造現場において複数のIoT機器が導入されつつあり、このような機器が発する電波が同じ周波数を利用する場合、互いに干渉し合うことで通信障害が生じ、その可能性を最大限引き出すことができなくなる可能性があります(*2)。
FFPAは、こうした課題に取り組み、国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT) の提案によるSRF無線プラットフォームをシステムの基本構成として採用し、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する通信規格を策定してきました。
(*1) 総務省 令和2年情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd267260.html
(*2) 経済産業省 2020年版ものづくり白書
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/index.html
SRF無線プラットフォームの構成
SRF無線プラットフォームはField Manager、SRF Gateway、SRF Device、SRF Sensorから構成されます (図2)。Field Managerは、複数の無線システムを統合管理するコントローラであり、アプリケーションの要求品質を満たし電波干渉を回避するよう無線リソースを協調し、制御ポリシーにより各無線システムに無線リソースを配分します。SRF Gateway/SRF Deviceは、Field Managerの管理下で無線通信を行う親機/子機であり、Field Managerからの制御ポリシーに従い自律的に無線リソースを制御し、無線回線状態等を測定しField Managerへ通知します。SRF Sensorは、Field Managerの管理下にない無線機器を検知・監視する無線環境センサです。これらの連携動作により、複数の無線システムが混在している無線環境において安定した無線通信を実現します。
図2 SRF無線プラットフォームの構成
SRF無線プラットフォーム通信規格技術仕様Ver. 2.0概要
技術仕様Ver.2.0では、SRF無線プラットフォームが適切に制御し統合管理を行う対象とする無線システムとして、技術仕様Ver.1.1までに対応してきた免許不要周波数帯の無線システムに加え、新たに5Gを追加しました。技術仕様Ver.2.0を用いることで、5Gと免許不要周波数帯の無線方式の双方に対応した無線機器は、より安定した通信や効率的な周波数利用を実現することができるようになります。例えば、5Gと免許不要周波数帯の無線システムの複数方式をサポートするコンボデバイスを搭載する自律移動ロボット (AMR: Autonomous Mobile Robot) が導入された現場においては、複数回線の切り替えや並列伝送による安定通信が可能になります (図3)。例えば、(1) AMRが免許不要周波数帯の無線システムで通信を行いながら移動する際、その周辺に設置された他のデバイスの通信により免許不要周波数帯が混雑している場合には、通信方式を5Gに切り替える、(2) AMRが移動や停止などの制御に関するデータと、AMRに搭載されたカメラからの動画データを、それぞれ無線で送受信する際、周波数帯の混雑状況に応じて制御に関するデータと動画データを免許不要周波数帯の無線システムと5Gを適切に切り替えて送受信する、といった制御が自律的に行われます。
さらに、技術仕様Ver.2.0ではSRF無線プラットフォームを構成する要素の1つであるSRF Gatewayでネットワークを中継するマルチホップ通信機能を追加しました。このマルチホップ通信では、SRF Gateway間の無線接続や、SRF Deviceを経由したSRF Gateway同士の接続が可能になります。これにより、安定した無線通信のカバレッジを容易に拡大することが可能になります。また、有線ネットワーク上にSRF Gatewayを設けることで、有線/無線混在ネットワークにも対応し、例えば5Gと有線の並列伝送のように、複数回線統合制御の柔軟性を向上させることができます。
図3 5Gに対応したSRF無線プラットフォームの活用例
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスについて
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスは、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する協調制御技術の規格策定と標準化、および普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進するために2017年7月に設立された非営利の任意団体。メンバー企業は、2022年12月末現在、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、サンリツオートメイション株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、富士通株式会社、村田機械株式会社、シーメンス株式会社、一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター。会長は、アンドレアス・デンゲル (ドイツ人工知能研究センター)。
FFPA公開サイト : https://www.ffp-a.org/jp-index.html
SRF (Smart Resource Flow)
SRF (Smart Resource Flow) は、マルチレイヤシステム分析を用い、製造に関わる資源 (人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など) がスムーズに流れるよう管理するシステム工学戦略。