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09/24/2019

2019年09月24日
フレキシブルファクトリパートナーアライアンス
国立研究開発法人情報通信研究機構

製造現場に混在する多様な無線通信を安定化する
通信規格の技術仕様策定を完了

~製造現場の様々な情報の可視化と統合管理を実現~

フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)*1は、製造現場の様々な用途として混在して利用される多様な無線システムの安定化を図るために必要な通信規格の技術仕様策定を完了しました。本技術仕様は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の提案によるSRF無線プラットフォーム*2をシステムの基本構成として採用しています。本プラットフォームを適用することにより安定した無線通信を利用することが可能となり、製造現場の様々な情報の可視化と統合管理を容易に実現することができます。

本技術仕様では、SRF無線プラットフォームの機能、インターフェースを規定し、製造現場に混在している多様な世代、規格、メーカーの無線システムが共存及び協調できる仕組みを実現しています。

本技術仕様の概要は、FFPAが10月31日に開催するセミナー「SRF無線プラットフォームで創る未来の製造現場 ~FFPAの技術仕様Ver.1を解説~」において発表します。

※SRF無線プラットフォームの研究開発は、NICTが総務省から受託した「狭空間における周波数稠密利用のための周波数有効利用技術の研究開発」により、実施しています。

【背 景】

製造現場では、人手不足や働き方の変化などによる制約がある中で、生産性向上のための情報通信技術の利活用が進んでいます。とりわけ無線通信を活用したい製造現場の声として以下の声があります。
・後付けセンサ:無線通信を利用して品質管理のため古い機械の詳細な状態を簡単に知りたい。
・移動体(人、AGV):人やAGV(自動搬送機)などは動き回るので、無線通信が必須である。
・工程やレイアウトの柔軟な変更:検査やプロセス監視のため、無線通信を利用してカメラを自由に設置したい。

機器状態監視、製品検査、工程管理、環境センシング、機器制御など多様な用途(アプリケーション)で無線システムが導入される事例が増えており、今後も更に増加するものと予想されます。

しかしながら、製造現場では無線通信の不安定性への懸念があります。様々なアプリケーションが免許不要周波数帯の無線規格を用いて独立に運用され、無線区間での干渉問題が生じ、アプリケーションが必要とする通信品質が満足されず正常に動作しないという問題が起こり始めているためです。 こうした懸念を解消するためNICTが機能とその間の情報のやり取りを定義した基本構成として、従来にはない「多種多様なシステムの協調と共存」という新しい概念を取り入れたSRF無線プラットフォームを提案しました。 さらにNICTとSRF無線プラットフォームに高い関心を持つ企業は2017年7月にFFPAを設立し、SRF無線プラットフォームを具体化し、社会実装していくために無線通信規格の技術仕様を策定してきました。

【成 果】

このほど、FFPAは、NICTが提案したSRF無線プラットフォームを製品に適用可能にするために、必要な機能、機能間のインターフェースの明確化を行った新たな通信規格の技術仕様を策定しました。 このプラットフォームを採用することにより、安心して安定に無線通信を利用することが可能となり、製造現場の様々な情報の可視化と統合管理を容易に実現することができます。

本技術仕様では、SRF無線プラットフォームの機能、インターフェースを規定し、製造現場に混在している多様な世代、規格、メーカーの無線システムが共存及び協調できる仕組みを実現しています。

SRF無線プラットフォームでは、フィールドマネージャが、ゲートウェイや無線端末から構成される複数の無線システムを管理・協調制御します。その際、
① 各無線システムにポリシー(方針)を与えることにより、無線資源(周波数、時間、空間)を配分すること、
② 無線通信とアプリケーションを意識した管理を行うこと、
③ 無線通信環境の監視を行うこと、
により、多様な無線通信を安定かつ効率的に運用することが可能となります(グローバル制御)。

また、無線通信環境が局所的に急激に変化することに対応するため、単一システムでの自律的な制御を可能にしています(ローカル制御)。

今回策定した技術仕様の概要は、FFPAが10月31日に開催するセミナー「SRF無線プラットフォームで創る未来の製造現場 ~FFPAの技術仕様Ver.1を解説~」において発表します。

【今 後】

今後テスト仕様の策定を進め、2020年中ごろを目途に認証プログラムを開始する予定です。また製造現場の様々な情報の可視化と、ネットワークに接続された設備の統合管理を可能とするSRF無線プラットフォームの普及を促進し、生産性向上のための情報通信利活用を推進していきます。

セミナー「SRF無線プラットフォームで創る未来の製造現場 ~FFPAの技術仕様Ver.1を解説~」について

FFPAの技術仕様策定を記念し、10月31日にフクラシア品川クリスタルスクエア(東京都・港区)にて開催するセミナー。
https://www.ffp-a.org/news/jp-index.html#20190924a

 

<用語解説>

*1 フレキシブルファクトリパートナーアライアンスについて
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスは、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する協調制御技術の規格策定と標準化、および普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進するために2017年7月に設立された非営利の任意団体。
メンバー企業は、2019年8月末現在、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、富士通株式会社、サンリツオートメイション株式会社、村田機械株式会社、シーメンス株式会社の8社。会長は、アンドレアス・デンゲル(ドイツ人工知能研究センター)。
https://www.ffp-a.org/jp-index.html

*2 SRF無線プラットフォーム
多種多様な無線機器や設備を繋ぎ、安定に動作させるためのシステム構成。SRF(Smart Resource Flow)は、マルチレイヤシステム分析を用い、製造に関わる資源(人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など)がスムーズに流れるよう管理するシステム工学戦略。


図1 無線プラットフォームで可能となる可視化と統合管理
 


図2 複数無線システムを協調制御するための構成